■-第5章 最終章- 別れ路

2019年01月02日

第5章 最終章 別れ路 -光と影-⑥-

「うわあ~!! 一面の花畑だあ~!! なんて、綺麗なの! わあ~いわあ~い!!」

 サタンが連れて来てくれた花畑は色とりどりの花が咲きほころぶ、まるで別世界のような美しさでした。加奈と竜斗は大喜びしながら、飛び回っていました。

「加奈は木々や植物が大好きだからね。本来の宇宙の旅はよく知らないが、少しでも自然を残すために、その生命の源を探す旅だったらしいが…。少しでも、花の思い出が出来ればと…ね…」
「すみません、サタン様のお気持ちも知らずにさっきは…」
「ライ、いいんだよ。何かあったか見当はつく。ライがいてくれて良かった。加奈は困っている人がいると、自分のことをかえりみず、無理をしてしまうから。でも、加奈の星は、強暴なモンスターはいないらしいから、無理はしないだろう」

 加奈が花で作った美しい花の首飾りを持って、二人の元へ戻って来ました。サタンとライに花の首飾りを掛けて、そして、自分は花の冠を被りました。

「サタン、ありがとう。お礼に花の舞を踊るね」

 加奈は歌いながら、柔らかな動作で舞い始めました。花畑の中で踊る加奈は、花の妖精のようでした。
 その舞を見ながら、サタンはもう二度と会うことが無いと思うと、余計に胸が苦しくなるのでした。ライも加奈に仕える事も出来ず、地球に行く事も叶わず、やるせなくサタンと同様に胸が苦しくなるのでした。

 優しい風が加奈の髪を揺らし、花びらが妖精のような加奈の踊りと共に、舞い踊るのでした。

 "時よ止まっておくれ
 せめて今、このひとときだけでも

 愛しいあなたとの、このひとときを

 でも、時は留まらない
 星々にも終末があるように
 ふたりの時も
 また、時を刻む"

 3人は、サタンの宇宙船の戻り、何度かのワープを重ねて、アンドロメダの軌道に入り、イカロス号にライと加奈は乗り込もうとしていました。

「加奈、気をつけて行くんだよ。地球へ帰ってからも無理をしないように、元気で暮らすんだよ」
「サタン、ありがとう。私のせいでサタンに迷惑ばかり掛けてしまってごめんね。でも、加奈は…」

 加奈の瞳から溢れるほどの涙が流れ、声が詰まって本当は言いたかった一言の言葉を、言う事が出来ませんでした。

「加奈…」

 二人は見つめ合い、言葉を出すことはしませんでした。ライまでも涙が流れてしまう程、切ない二人の姿でありました。

 イカロス号に乗り込む時、加奈は泣きながらサタンの名を何度も呼び続けましたが、サタンは振り返る事はありませんでした。
 
 サタンは自分の部屋の窓から、イカロス号を見送っていました。サタンの後ろ姿はあまりに寂しく暗く、宇宙の闇の中へと溶け込んでいってしまう程でした。

 星々はそんな二人を思うのか、輝きを増して色とりどりに光り始め、光がメロディを奏でているようでした。しかし、そんな美しく輝く星々の間から、炎のように不気味に光る二つの赤い目が、嘲笑うかのようにサタンと加奈を見つめていました。

                                   完




あとがき
 
 長い間、読んで下さり、ありがとうございました。
 書き始めた時には、まさかこんなに長くかかるとは思いませんでいたし、最初のテーマから随分と内容がかけ離れてしまいました…。

 でも、どうにか最終章までたどりつきました )^o^(ホッ

 けれども、人が成長して年月を重ねるように、サタンと加奈のその後も書いてみたいと思い、続・光のオルゴールを執筆中です。

 続・光のオルゴールでは、新しいメンバーが加わります。
 彼女たちの活躍も応援して下さいね。

                                                                すみれ

続光のオルゴール




tritonsora at 21:06|PermalinkComments(0)

2018年09月09日

第5章 最終章 別れ路 -せつなき想い-⑤-

 加奈の体力が元に戻るまで、思った以上に日数が経ってしまいました。それでも強暴な大型モンスターはいますが、昔の地球と同じ大自然に囲まれたこの惑星の澄んだ空気のおかげで、加奈はすごく体が楽になりました。

 自然の恵みに感謝し、収穫祭もあって、加奈たちへのお礼といつもより盛大に祭りが、執り行われる事となりました。

 小さな集落でしたが、日本の祭りのような雰囲気で、加奈は大喜びでした。村の広場には飾り付けが出来て、そこで皆が踊り、まるで盆踊りと似た踊りで、加奈とライはその輪の中に入り、村人達と踊り続けるのでした。
 竜斗もぐるぐると周りを飛んで、まるで一緒に踊っているようで、皆はその様子に大笑いでした。同じひとときを一緒に笑い合う素晴らしさを、ライは初めて知ったのでした。 ライは、うれしさの反面、怒りが込み上げてくるのでした。何故、サタンはあんな女と一緒に女の村へ行ったのか、何故、用事が終わったら、加奈のもとへ来ないのか、もうすぐ加奈様は地球に戻られるのに、何故、もっと優しく労わってあげられないのかと…。

「ライ、どうしたの。顔がこわばっているよ」
「あ…いえ…」
「もしかして、サタンのこと?」
「え!!」
「ライは最近、すぐ顔に出るから、クスクス」

 ライは、顔が真っ赤になり、照れ笑いをするのでした。

「サタンの事だけど、何かアクシデントがあったのかもしれないよ。そうでなければ、もっと早く合流出来たと思うよ。ねえ、ライ。私の熱のこと、サタンには言わないでね」
「え? どうしてですか」
「もう、地球へ戻るから、これ以上心配かけたくないし…。それに、サタンにとって、私は…」

 そこまで言うと、加奈は顔を逸らしてしまいました。

「あ、竜斗はどこへ行ったかな。ちょっと探してくるね」

 ライは一瞬、加奈が悲しそうな顔をして目が潤んでいた事に気づいたのでした。

“加奈様…。本当は加奈様だってぼくと同じ思いのはずなのに…。お優しいから、よけい辛いのでしょう…。やっぱり、サタン様は冷たい…”

 加奈とライと竜斗は、村人達からたくさんの村名産の食べ物をもらい、村人達が見守る中、村を後にしたのでした。

 元来た道を戻りながら、2人は心地良い気分でしたが、ちょうどサタン様と別れた場所に、サタンとあの女の姿がありました。
 ライは、サタンだけでなく、女と一緒だったのに、怒りを抑える事が出来ませんでした。

「ライ!!」

 サタンの所へ走って行くライに、加奈は呼び止めようとしたのですが、ライの速さに追いつけませんでした。

「あ、ライ。加奈は…」

 サタンが言いかけようとした瞬間、ライは、サタンの頬を強く引っ叩いたのでした。

「ちょっと、あんた。私のサタンに何をするのよ!!」
「あんたは黙ってろ!! サタン様、どういうつもりですか! こんな女といちゃいちゃしていて、今まで何をしていたのですか! 加奈様がどんな目に遭っていたのか…!!」
「え!? 加奈に何かあったのか!!」
「ライ!! だめだよ、それ以上は!!」

 加奈は、ようやくライに追いつき、ライを押し止めたのでした。

「ライ、だめ!!」
「でも、加奈様。ぼくは悔しいんです。加奈様はお優しすぎます。地球へ戻るからこそ、地球へ戻るからこそ…」

 ライの目から涙があふれてくるのでした。

「ライ、ありがとう。加奈は大丈夫だから、泣かないでよお…。私…私まで悲しくなるでしょう。クスン、クスン、アーン、アーン」

 ふたりの泣いている姿に、竜斗もオロオロして、ふたりの周りをぐるぐると回っているのでした。

「何? このふたり? 頭がおかしいんじゃないの。ねぇ~、サタン。もう少し村にいてよ」
「リーゼ、その手を離してくれ。もう、村長の用事は終わったはずだ。ぼくは、ふたりと行く所があるんだ」
「分かったわ。まあ、いいわ。昨日の夜は嬉しかったわ。又、来てね。いつまでも待っているわ。私のサ・タ・ン」

 女は意味ありげに笑いながら、元来た道を戻って行くのでした。

「すまなかった、ふたりとも。ちょっとアクシデントがあって、その…」
「やめて下さい!! 言い訳は!! 聞きたくもない!!」

 ライは、サタンの顔を睨みつけたのでした。

「ライ!! だめだよ。そんな事言っちゃ! 少し、落ち着いたらサタンの話を聞こうね」
「すみません。ちょっと…大人げありませんでした」
「ライは私のことを思って言ってくれたんでしょ、ありがとう。それよりサタン、どっか連れてってくれるとこがあったの?」

 まだ、涙の跡の残る加奈の顔を見たサタンは、自分がいない間、又、何か大きな出来事があったことに気づいたのでした。
 いつも冷静なライが、自分に対して、あんなに怒りをぶつけるとは、加奈に何かあったことに他なりません。
 加奈は、何も言わず、いつもと変わらず、笑顔で話しかけてくれるのが、かえってサタンの心を暗くするのでしした。前は、正直に自分の感情をぶつけてくれたのに、いつからだろうか…。
 それが、女の子の淡い想いの現れであることに、サタンは気づくはずもありませんでした。


tritonsora at 19:49|PermalinkComments(0)

2018年07月14日

第5章 最終章 別れ路 -結界-④-

 誰もが寝静まった静寂を突き破るように、凄い地響きが村中に轟きました。加奈は嫌な予感がして、窓の外を見ました。
 何という事でしょう!!
 あのモンスターとは別の更に巨大なモンスターが、地鳴りのような足音をさせながら、村の方へ向かってくるではありませんか。

「た、大変だわ!!」

 加奈は、ライと竜斗を起こし、おじいさんとおばあさんを起こし、安全な場所まで逃げるように言ったのでした。
 外に出て見ると、村人たちはオロオロして、皆、立ちすくんでいるのでした。

「みんな、なにやってんの!! 早く、早く安全な場所に逃げないと危ないわよ!!」
「あ…安全な場所と言っても、どこへ逃げればいいか…」
「家や土地が無くなると、ワシらは生きていけない…」
「もう時間が無いわ。ライ、結界を張るわよ。お願い、一緒に唱えて!!」
「加奈様!! あのモンスターを足止めさせる結界となると、相当強い結界を張る必要があります。加奈様の体が持ちません!!」
「やるしかないわ。村の人たちの命がかかっているよ。さあ、行くよ!!」

 加奈は、モンスターが迫り来る道の方へ走っていきました。

「ま…待って下さい!! 加奈様~!!」

 加奈自身も、巨大な結界を張るのは初めてでした。でも、加奈は気を集中して呪文を唱え始めました。ライもその後に続きました。竜斗も翼を大きく広げて、顔も見る見るうちに変化し、モンスターに向かって威嚇をするのでした。
 加奈とライの精神波のオーラが共鳴し、大きな結界が出来上がっていきました。普通の結界より大きくするには相当気を集中し、長く呪文を唱える必要があります。
 巨大なモンスターは、もうすぐそこまでやって来ています。加奈の額から汗が流れ落ち、息も苦しくなってきました。加奈は意識が遠のくのを感じましたが、モンスターは結界の前で、立ちつくしているのが見えました。

“もう、大丈夫だよね。苦しい…息が…出来ない…”

「加奈様~~!!」

 ライの声が聞こえたような気がしたのですが、加奈はその場に倒れてしまいました。
 加奈は夢の中を漂っている感覚がありました。体がふわふわと宙に浮いて、周りの景色は幾何学的で、それでも気持ち良くて、このまま漂っていたいと思いました。
 
 遥か向こうに光が見えました。とても眩くて、気持ち良さそうな場所に感じました。
 しかし、どこからか声がしました。ふと振り返ると、加奈はベッドの中でした。

「加奈様、良かった…良かった…。目を覚まして…ううう…」
「ライ、どうしたの? 何故そんなに泣くの?」
「加奈様はもう3日も寝たままで、熱が下がらずお苦しそうで…。ライは生きた心地がしませんでした…」

 後ろでおじいさんたちも泣いて喜ぶのでした。
 加奈が窓の外を見ると、村人たちが全員が、心配そうに見つめているではありませんか!加奈は、窓を開けて手を振ると、村人たちは、涙を流して嬉しそうに手を振り、ありがとう、ありがとうと叫ぶのでした。



tritonsora at 16:02|PermalinkComments(0)

2018年07月07日

第5章 最終章 別れ路 -モンスター襲来-③-

「ライ、どうしたの? ライらしくないよ」
「え? ああ、さっき…。すみません、つい、カッとなってしまって。でも、急に宇宙船から飛ばされたのに、何故サタン様は!! ぶつぶつ、ぶつぶつ!!」
「アハハハ!!」

 加奈は、何故かいつも冷静なライが、愚痴を言う姿が可笑しくて、大笑いしてしまうのでした。

「?? 加奈様、どうかなされたのですか?」
「クスクス、ううん、なんでもないよ。それよりほら、村に着いたみたい」

 二人が村に入ると、ちょうど村人たちは畑仕事を終えたばかりなのか、それぞれの畑で食事をとっていました。

「おや、あんたたち、この星の者ではないね」

 気さくな白髪の優しそうなおじいさんが声をかけて来ました。

「あの、すみませんが、宿屋か食堂はありますか?」
「そんなものは無いよ。小さな村だからね。良かったらうちにおいで」
「え!? でも…」
「遠慮しなくていいよ。久しぶりのお客だ。ばあさんも喜ぶよ。家はすぐそこだ」

 可愛い赤い屋根と小さな庭には、色とりどりの花が植えられていて、まるで童話から出てきたような、メルヘン的な家でした。
 やさしそうな小太りのおばあさんが、笑顔で迎えてくれました。お腹が空いているだろうと食事の用意までしてくれて、加奈とライは暖かな気持ちになるのでした。ようやく目覚めた竜斗は不思議そうに回りを見ながらも、加奈のひざの上でおとなしくしているのでした。

「おや、このドラゴンの子供は、もしかして白ドラゴンかね?」
「はい、おじいさんは白ドラゴンをご存じなのですか?」
「話を聞いただけだけど、本当に白ドラゴンが存在するとはね。白いドラゴンはとても珍しいドラゴンだから、大事にしてあげなさい。わしは、まだ仕事があるから、あなたたちは好きなだけいてくれて構わないからね。それじゃあ、ばあさん、行ってくるよ」
「はいはい。気をつけて下さいね」

 加奈はふと、机の上に飾られた、加奈と同じ位の少年の写真に目が行きました。写真の前には花と食べ物が置かれてありました。写真を見つめている加奈に、おばあさんは話し始めました。

「この子は私たちのたった一人の大事な孫だったのですよ。とってもやさしく気のきく子で…」

 おばあさんは、話をしながら、涙を流すのでした。

「おばあさん…」
「あっ…ごめんなさいね。この村は、普段は穏やかな村なんですけど、時々、畑を荒らす大型のモンスターが出るのですよ。じい様の畑がモンスターに荒らされて、その畑を守ろうとして、大ケガをしてしまってね。隣り村に傷に良く効く薬があるのですけれど…。うちの村の隣り村は昔から仲が悪くて…」

 おばあさんは、もうそれ以上は何も言わず、少年の写真を手に取り、優しく写真を何度も撫でていました。
 いろいろ事情があるのだと、加奈とライはそれ以上、話を聞くのをやめました。どこの星でも、人と人との争いがあり、弱い力の無い者が犠牲になるのは世の常なのだろうかと、加奈は淋しく思うのでした。

「た、大変だ~!! ばあさま、大変だ!!」

 ドアが思い切り開くと、真っ青になって息を切らした村人が、何人か入ってきました。

「あいつが…! 例のモンスターが現れた! じい様は!? じい様はどこだ!!」
「ええ!? 畑に行っているのだけれど…」
「まずい!! 早く知らせて逃げないと、今度のモンスターはでかいぞ!!」
「そ…そんな…」

 おばあさんは、恐怖のために腰が抜けて動けなくなってしまいました。

「ライ! 私たちが行こう!」
「加奈様、危険です!!」
「とにかく、早くおじいさんの畑へ行って知らせないと。おばあさん、おじいさんの畑はどこですか?」
「ここから山に向かって道なりに行けば畑に着くけれど、あなた達まで危ない目に遭わせては…」
「急いで、ライ!!」
「はい!」

 二人は、全速力でおじいさんの畑へと急ぎました。竜斗も大きく羽を広げて、加奈たちの後ろからついて行きました。

「グガアア~~~!!」

 すごい声が聞こえて来ました。まるでマンモスのような巨大なモンスターが、ドシドシと村の方へ来るのが見えました。

「まずいわ、このままじゃあ村の人たちも危険よ!!」
「加奈様、おじいさんの畑が見えて来ました。あのままじゃ踏み潰されてしまう!!」
「ライ、私が弓で足止めさせているから、その間におじいさんを助けて!!」

 加奈が星の弓を引くと、星の弓は光り輝き、強靭な矢が凄い速度でモンスターの右足を射抜きました。

「もう1本!!」

 加奈はまた集中し、星の弓を引くと、星の弓は光り輝き、風の矢となり、モンスターの左足を射抜きました。

「グガアアア~~~!!」

 モンスターは、凄く苦しそうな声を出し、その場で座り込んでしまいました。

「今よ、ライ!! 急いで!!」
「ハイ」

 ライは、畑の真ん中に倒れているおじいさんを担ぎ出し、どうにか助け出すことに成功したのでした。気絶しているものの、どこもケガをしている様子はありませんでした。
 しかし、モンスターをこのままの状態にしては、村の方に来ては村人たちが危険です。
 その時、竜斗がモンスターの方へ飛んで行きました。

「竜斗!! 危ない! 戻ってらっしゃい!!」

 竜斗は、モンスターの頭の回りをぐるぐると回り、モンスターは立ち上がり、竜斗が山の方へ向かうと、もと来た道を足を引きずりながら、去っていきました。
 モンスターが去った後、竜斗も加奈のもとへ帰って来ました。

「竜斗、偉いわ、よくやったわね」
「ガウガウ」

 竜斗はくるりと体を回転させました。

「加奈様、もう大丈夫です。おじいさんを早く家に連れて帰りましょう」
「それにしても、あんなに巨大なモンスター、また現れたらどうするのかしら…」

 おばあさんが涙を流して喜び、おじいさんは、目を覚まして何事が起きたのかと、キョトンとしていました。
 おばあさんはとても喜んで、夕食にはこの村名産の珍しい果物を切ってくれました。
 山盛りの食事で、遅くまで語らいながら、おじいさんの無事を喜び合うのでした。


tritonsora at 19:42|PermalinkComments(0)

2018年05月20日

第5章 最終章 別れ路 -届かぬ想い-②-


「加奈様! 加奈様!!」
「う~ん、むにゃむにゃ……ごはん、まだ?」
「加奈、何をねぼけている! 早く目を覚ませ!」

 ねむけまなこの加奈の目に映ったのは、心配げに見つめるライと呆れ果てた顔をしているサタンの姿でした。

「加奈様、どこかお怪我はありませんか? 大丈夫ですか?」
「あ!!……そうだった!! 宇宙船から、又、飛ばされたんだった。ここは、どこ?」

 加奈があたりを見渡すと、うっそうとした森の中、むせかえる程の緑の香りと生い茂った木々の隙間から、美しい山々が連なっていました。鳥の声も聞こえ、加奈が以前降り立った原始星同様に、自然豊かな場所でした。

「うわあ~! 空気がおいし~い、気持ちがいいねぇ」
「そうですね。でも…」
「?? ライ、何か気になる事でもあるの?」
「どこか見覚えのある星なのですが、私の記憶が正しければ、この星はスクトウム星から、そう離れていないエアルアル星だと思うのですが…」
「ライはこの星を知っているの?」
「はい。以前、仕事で王子と一緒に降り立ったのですが、美しい星ではありますが…」
「???」
「大型のモンスターが多いのです」
「大きいモンスター??」

「それも、凶暴で人を食べる」

 今まで黙っていたサタンが、ぼそりと言ったので、加奈は、口をあぐあぐして何も言えず、真っ青になってしまうのでした。そんな話をしている時、突然、森の中からガサガサと音がしたのでした。

「ひ!! 人食いモンスター!?」

 サタンもライも剣を持ち、身構えた瞬間でした。
 ライと同じように耳が少し長く空色のオカッパ頭の美しい女性が笑いながらサタンに抱き着いてきました。

「え!?」
「!?」

 加奈とライはあまりの突然の事に、口を開けたまま、何も言うことが出来ませんでした。

「久しぶりね、サタン。とても会いたかったのよ。今回はどの位この星にいられるの? 私の村に来てくれたのでしょう」
「リーゼ、ちょっと離れてくれないか。今日は仕事で来たんじゃない。君の村には行かない」
「どうして? あら、今日はひとりじゃないの?」

 その美しい人は、加奈をまじまじと見つめました。加奈に注がれる刺すような視線に、言葉が出ませんでした。

「この子供、サタンの妹? 同じ黒髪だけど似ていないわね。こんな子供、何で連れて来たの? この子は宇宙船に置いて、サタンだけ私の村に来てよ」
「君! 失礼じゃないか!! 加奈様は子供じゃない」
「ライ!! 初対面の人に失礼よ。ごめんさい、私、この星初めてなので…」
「あら、そうなの。ふ~ん…あなた、子供のくせに加奈様って偉いの? そうは見えないけど」

 ライは、もう怒りが露わであわてて加奈はライを押し留めながら、女に笑顔で話すのでした。

「全然、偉くないですよ。実は私、サタンの遠い親戚なのです。それで、似てないんです」「あ~、そうなの、そうよね。全然似てないもの。あなた達も村に来ていいわよ。ご馳走するわよ。ねえサタン~~、 いいでしょう」

 甘ったるい声でベッタリと、又、サタンに抱きついて、サタンはうんざり顔でしたが、女のなすがままでした。

「それじゃ、今日だけだからな。明日は行く所があるから」
「サタン様!!」

 ライは怒ったようにサタンを睨みつけました。

「分かりました!! 加奈様、私たちはお邪魔のようですから、別の町か村へ行きましょう!」
「あ! ちょ…ちょっと、ライ!!」

 まだ気を失っている竜斗を抱いている加奈の手を引っぱって、ライは反対側に歩いていくのでした。加奈は振り返り、サタンを見ましたが、サタンは追いかけてくる様子も無く、ベタベタする女性と話をしていました。加奈は、少し淋しい気もしましたが、いつもの事と思いながら、ライと共に山道を下っていきました。
 はるか下の方に、同じ作りの家々が並んだ小さな村が見えて来ました。家々の回りには、果物のような美しく大きなオレンジ色の実が、たわわに実っていました。のどかな里山の村の景色に、加奈とライは心を奪われて、少しの間、立ちつくしてしまうのでした。



tritonsora at 14:26|PermalinkComments(0)

2018年02月12日

第5章 最終章 別れ路 -最後の惑星-①-

「加奈、まだか?」

「え~っと…」
「加奈、またなのか…」
「だって…」
「わかった、わかったよ」

 サタンは加奈の部屋の入りました。案の上、いつものように加奈は、上着を前と後ろ反対に着て、腰ひもはダランと垂れ下がり、靴下は、半分ずれて髪の毛はボサボサでした。

 サタンは加奈の身だしなみを直すのが日課になってしまいました。

「ほら、こうして結べば、綺麗に蝶結びになるだろう」
「じぃ~~」
 加奈は、腰ひもではなく、サタンの顔を見つめていました。
「な…なに?」
「サタンは男の子なのに、なんで何でも上手に出来るの?」
「お、男の子!?」
「だって、サタンはまだ19才なんでしょ。私の星だと高校卒業して大学に入ったばかりの年齢だよ」
「だから?」
「まだ、ワイワイガヤガヤする歳なのに、サタンは大人だよね」
「それで?」
「19才って、まだ多感な年頃だよね。女の子にもいっぱい興味あるよね」
「何が言いたいんだ、加奈」
「サタンも、ミーティア王女様みたいにグラマーが好きなの?」
「ええ~!? な、なんでそんな話になるんだ!?」
「だってぇ…」
「ほ、ほら、こっち向いて。ボタンがずれている」

 二人の様子をそっと見ていたペルセウス王子は、笑いが止まりませんでした。

「ククク、アッハハハ!! おかし~い、お腹が痛くなるぞ」
「王子、悪いわよ。そんなに笑うなんて」
「あの二人、可愛いなあ。アハハハ。もうだめだ。腹がちぎれそうだ」

 二人はとても初々しく映りました。クールなサタンも加奈にかかっては、何か調子が狂ってしまうのでしょう。
 ようやく目覚めた加奈の服を直しながら、サタンはこんな有りふれた日常がとても幸せで、満ち足りた気持ちになるのでした。しかし、二人の路はもうすぐ右と左に別れる日が近づきつつありました。

「お…お待たせし…ました」

 ライが両手いっぱいの荷物を持って、部屋に入ってきました。

「ライ、何!? そのいっぱいの荷物??」
「王子とミーティア王女様からの贈り物です」
「ええ~~?? こんなにいっぱい!」
「あら、加奈、これでも半分に減らしたのよ。本当は、全部持って行ってもらいたいのに、サタンたら必要無いなんて言うんですもの」
「ハ…ハア…」

 加奈は、凄い荷物の山にびっくりするばかりでした。

「それでは、宇宙船の方へお持ちしますが…」
「少し待ってくれないか。城より離れているところに、宇宙船を待機してあるから」

 サタンと加奈は、王子と王女に別れを告げて、また、サタンの宇宙船へと戻って行くのでした。
 ライは、アンドロメダ星までついて行く事になりました。サタンの宇宙船は、アンドロメダには降りられないので、ライが一緒に、イカロス号で降りる事になったのです。
 ライ自身は、地球まで、いいえ、ずっと加奈の従者としてついていきたかったのですが、それは許されませんでした。
 タルタロスの存在が完全に消滅したか分からないし、ペルセウス王子が王に即位後、ライの力が必要なはず、と加奈は思ったのでした。
 だからと言って、ライの気持ちを無下に断れないので、アンドロメダまでとなった訳です。

 サタンの宇宙船内の高度の設備や乗組員のロボット、サイボーグは、ライにとって何もかもが新鮮でした。

「サタン様、加奈様、お帰りなさいませ」
「一人ライが増えるから、そのつもりで」
「はい、サタン様。メシエ様からお話があるそうです」
「すぐに行く。加奈、ライの部屋は、僕たちの隣にするから、そっちで待っててくれ」
「うん」

 加奈とライは荷物の整理を始めました。
 たくさんの服、宝石、そして食べ物、全部の荷物を開けるのに、1日では終わらないくらいでした。

「こんなにいっぱいの服、まるでこれじゃあファッションショーが出来ちゃうわ」
「ファッションショー?」
「あれ…この石のような金属? 何か不思議な力を感じるけど…」
「さすが加奈様。この金属の力を見抜くとは! この金属はオリハルコンです」
「ええ~~!! オ、オ、オリハルコン!!」
「?? 加奈様、ご存じなのですか」
「オリハルコンって、幻の金属で、実在するなんて信じられない…」
「はい、とても貴重な金属ですが、とても丈夫で軽く、武器や武具を作るのに使います。他の金属や原石、モンスターの骨、幻の花のエキスなどと一緒に錬金を繰り返すと、伝説の盾と同じ位の頑丈さで強い盾が仕上がります」

 "確か、壁画の女神様が錬金を重ねて強靭な盾があれば、タルタロスの炎にも耐えられると言っていたけれど…"

 加奈は、タルタロスの事が気になって仕方がありませんでした。どの星に行っても、タルタロスの分身がいて、本体のタルタロスを倒さなければ、どの惑星にも危険が及ぶのではないかと思うのでした。
 でも、加奈は、地球に戻らねばなりません。

「加奈様、どうなさったのですか?」
「あ…うん…。あれ??」

 その時、突然、加奈の耳にかすかに何かの音が聞こえてきました。その音はどんどん大きくなり、激しい耳鳴りがして空間がどんどん歪んで来ました。

「気持ち悪い~~!!」

 吐きそうで、加奈はしゃがみこんでしまいました。

「加奈!!」

 操縦室にいたサタンが走って来ました。サタンはしゃがみ込んでいる加奈を抱きしめ、ライの手をつかみました。

「ライ、時空の歪みが発生している! 互いの手を離すな! 意識を集中しろ!!」
「ぐう…」

 ライもひどい吐き気に襲われながら、サタンと加奈の手をしっかりと握りしめました。

「うわあ~~~!!」

 時空の歪みの波が、3人を飲み込んでしまいました。 



tritonsora at 13:46|PermalinkComments(0)
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