第2話 -メシエの秘密-

2016年10月15日

第4章 いざないの扉 第2話 -メシエの秘密-

「加奈、話がある」
 サタンはそう言うと、食べ終わったお皿を横に動かし、加奈の方にいつになく真剣なまなざしで話し始めました。
「タイタン号の事だけど、前にも話をしたと思うが、船全体が移動したみたいだ」
「え? それじゃあ…今は…」
「大丈夫。メシエが場所を割り出している。確実な場所がわかるまで、数日かかるだろう。加奈をひとり、この宇宙船に残すのは不安だが、頼まれた仕事が山積みだ。それに、宇宙金もだいぶ減っている。宇宙船の整備とタイタン号を探すためにも多くの金が必要だから仕事をこなしてくるよ。加奈、悪いが、少しの間、留守を頼む」
「え…仕事って…」
「いろいろだ。メシエにも皆にも頼んであるが、万が一、前みたいに奇襲される可能性もあるが、加奈、ある程度戦えるようになったはずだ」
「え…でも…」
「ただ、なるべく道術は使うな。宇宙間では、加奈の体に負担がかかる。それと、星の弓は特にだめだ。宇宙船の機能に支障が出てくるからね。それじゃあ、頼むよ」
「もう行くの?」
「タイタン号の詳しい話を知りたかったら、メシエに聞くといい」

 サタンは、椅子の後ろに掛けてあった黒いコートをはおり、銀の剣を腰に差し、食堂を出ました。加奈はあわてて見送りしようと、後ろからサタンの後を追いました。
「加奈、見送りはいい」
 サタンの顔は、もういつもの顔ではありませんでした。

 加奈は時々、サタンが怖くなる時がありました。鋭い視線が、加奈の心を突き刺すような、戦いの時のサタンは、普段のサタンとまるで別人のようだったからです。
 シリウスの変身の時、ルーディヒの最初に会った時の獣のようなまなざし、そしてサタンの凍るほどの鋭いオーラ…。それは、体の中に埋め込められたタルタロスの力からくるものなのでしょうか…。

 3人の人生を狂わせたタルタロス、そして遺跡の中にいた巨大なムカデに変わってしまった少年、タルタロスとは一体、何者なのでしょうか。タルタロスの事を思うと、言い知れぬ恐怖に襲われる加奈でした。

 メシエは、加奈に分かりやすくタイタン号の事を話してくれましたが、宇宙知識があまり無いため、ちんぷんかんぷんでした。加奈が自分なりに解釈すると、タイタン号の船長さんは、船のパワー全部を使って、ワープを試みたようでした。もともと強いワープは使えない構造でしたから、飛んだ先の宇宙空間では、すべての機能が使えなくなっているため、幽霊船状態といった方が言いかもしれません。それでも重力波で粉々になるよりはましです。
 
 タイタン号が無事であるならば、修理をすれば地球へ戻れると、メシエは言ってくれました。しかし、タイタン星は無理とのこと。
 何故か、タイタン星の位置がおかしいらしく、その回りの銀河が、とてつもなく大きなブラックホールに飲み込まれて、さらに巨大化しているため、星の電波が狂っているようでした。
 以前無かったブラックホールが、突如現れる訳ではなし、宇宙を詳しく知っているメシエにも分からない事だったのです。

 時空の道をたどれば、思ったより早くアンドロメダ経由で地球に戻れるようでした。タイタン星へ行くはずが、随分と違う旅になってしまい、グリーン生命体の事はさらに謎が深まってしまいました。
 でも、大ヘビのオババ様が一度は地球へ戻りなさいと言っていた事を加奈は思い出していました。

 もうすぐサタンと一緒の旅も終わろうとしていました。それは、サタンとの別れを意味していました。そしてリュウトとも…。
 地球にはドラゴンはいません。連れて帰れば、研究材料にされてしまうでしょう。
 きっと、サタンが面倒を見てくれる、加奈は急に悲しくなってきました。
 でも、今は、考えないようにしようと思いました。何故なら、考えている時間より、サタンとリュウトの時間を大切にしたいと思ったからでした。

 サタンが留守の間でも、規則正しく生活しなければならなかったのですが、どうも勉強は苦手でした。勉強を教えてくれるロボットスクール君には悪いと思いつつ、その時間になると、加奈はメシエの所へ行くようにしていました。
 メシエのいる操縦室は、緊急時を除いて、サタンと加奈だけが入れるようになっていました。
「メシエ、また来たよ~」
“加奈様、この時間は勉強の時間のはずですが”
「う~ん、勉強嫌いなの」
“お気持ちはわかりますが、知識が無いと、特に宇宙では危険です。知らないと大ケガします”
「でも、本を開くと吐き気がするんですもの、難しすぎて」
“困りましたね。サタン様から叱られますよ。私が怒られます”
「あら、それは悪いわね。それじゃあ、もう少しお話したら、部屋に戻って勉強するわ」“ハイ、そうして下さい”
 加奈はメシエと楽しく話をした後、自分の部屋へ戻っていきました。

 メシエは加奈と話をしていると、遠い記憶の中で、誰かが自分を呼ぶような感じがする時がありました。その感覚は、メシエは人では無いので、自分の記憶メモリーの中に、まだ覚醒していない部分があると確信していました。その部分は、最近、特に強くなって、時折、何故だかコンピューターが、誤作動を起こす原因にもなっていました。すぐに、それは感知され、正常に戻るのですが、メシエには、誰かがその記憶を誤作動させないように、強い電波で邪魔しているような気がしてならなかったのです。
 その強い波動が、誰だかメシエには分かっていました。だからこそ、1日も早く、その記憶を呼び戻したいと思っていました。
 ただ、不思議なのは、今まで何も感知していないことが、加奈が来てから、その記憶が少しずつ、鮮明になって来たことでした。

 まだ、自分が小さな部品に過ぎなかった頃、いろいろな情報の中に、不思議な星図と文字と人の言葉も入力されていました。
 メシエの記憶をたどると、サタンと自分、そしてサタンの両脇に金と銀の剣が、小型カプセル形の宇宙船で宇宙をさまよっていたことは、はっきり覚えていました。サタンがいつも持っている銀の剣は、この時の銀の剣でした。金の剣は、何故だか鞘が抜けず、何か意味のある剣なのは確かでしたが、サタンの部屋の奥の扉の箱にしまったままでした。
 では、誰がサタンとメシエを宇宙船に乗せたのか、そこがメシエの記憶からすっぽりと抜けていたのでした。

 しかし、加奈と話すたびにその抜けたところ、一番肝心なサタンが生まれた星、何故赤ん坊のサタンを宇宙へ旅立ちさせなければならなかったこと、サタンの両親のことが、おぼろげながら、断片的に記憶が繋がってきているのです。
 そこが分かりかけると、コンピュータ内部に異常音が出て、宇宙船の機能に支障が出るため、メシエは思い切った事が出来ずにいました。
 この事は、まだサタンには話をしていませんでした。はっきりしないまま話をすることは、サタンの心を傷つけると思ったからでした。
 メシエには、自分の事が謎だらけで、本来のやるべき事をやりたいと強く思うのでした。

「ビィ~、ビィ~、ビィ~」
 宇宙船内に異常音が響き渡ります。
「メシエ様、大変です!! 前方から、黄色の信号をキャッチしました」
 緊急のため、宇宙船の戦闘準備サイボーグから、メシエに報告が入りました。
“しまった、気付くのが遅れてしまった。私とした事が…今、ここで戦うと加奈様に危険がおよぶ!!”

 メシエは、一時、少し離れた銀河にワープしました。突然にワープのため、宇宙船がだいぶ揺れて、加奈が慌てて操縦室に入ってきました。
「メシエ、どうしたの? 敵の奇襲?」
“加奈様、申し訳ありません。気付くのが遅れ、このまま戦闘になりますと、船内に敵が入ってくる恐れがあるため、少しの間、軌道を離れました。位置を確認します”

 操縦室のコンピューターが、凄い勢いで数字が回っていました。加奈はそれが、メシエが何かを悩んでいるように見えました。
 機械が悩むなんて考えられないことかもしれませんが、加奈には、人間と同じように話をするメシエが、ただの機械とは思えなかったからです。
“お待たせしました。位置を確認しました。このまま少し待機した後、また元の軌道に戻ります”

 その時、今まで聞いたことの無い異常音が鳴り響きました。その音が鳴ったかと思うと、急に宇宙船の機能がすべて切れて、異常時に作動する電気だけになりました。

 薄暗くなった宇宙船内に、メシエのコンピューターの作動も止まり、上からシャッターが下りて、すべての操縦室がまるで壁だらけになったような感じでした。
 もう、メシエの声も聞こえなくなりました。
「こちら、宇宙銀河団警備の者だ!! そこの宇宙船!! そのまま待機しろ!!」
 宇宙船の中に、声が聞こえて来ました。


「??? どうしたの? どうしたらいいの?」
 加奈はオロオロして、そこに立ちつくしてしまいました。

 ガタンと宇宙船が激しく揺れて、船内に人が入ってくる異常音も鳴り響いていました。 ダダダと人の走る音がすると、ドアの外から声が聞こえてきました。

「宇宙銀河団警備の者だ。ここを開けなさい!! これより先、スクトウム銀河に入る。手続き無い者は、スクトウム銀河の法律により、強制的に身柄を確保する!!」

 何が起きて、どうすればいいのかわからないまま、加奈は操縦室の二重扉を開けました。加奈の目の前に、武器を持った制服姿の男たちが、加奈を睨みつけていました。そして、加奈の回りを取り囲んだのでした。



tritonsora at 14:14|PermalinkComments(0)
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター

    記事検索
    ギャラリー
    • 第5章 最終章 別れ路 -光と影-⑥-
    • 第3章 星の紋章 第12話 -光の糸-
    • 第3章 星の紋章 第11話 -それぞれの想い-
    • 第3章 星の紋章 第10話 -すれ違う心-
    • すみれの説明案内板3
    • 第3章 星の紋章 第9話 -風読みの言霊-
    • 第3章 星の紋章 第9話 -風読みの言霊-
    • 第3章 星の紋章 第8話 -風の音符-
    • 第3章 星の紋章 第7話 -妖精の繭玉-
    • すみれの説明案内板2
    • 第3章 星の紋章 第6話 -タルタロスの影-
    • 第3章 星の紋章 第5話 -苦難の道筋-
    • 第3章 星の紋章 第5話 -苦難の道筋-
    • 第3章 星の紋章 第5話 -苦難の道筋-
    • 第3章 星の紋章 第4話 -星の紋章の剣-
    • 第3章 星の紋章 第4話 -星の紋章の剣-
    • 第3章 星の紋章 第3話 -天空の矢じり-
    • 第3章 星の紋章 第3話 -天空の矢じり-
    • 第3章 星の紋章 第2話 -短剣の謎-
    • すみれの説明案内板
    • 第3章 星の紋章 第1話 -宇宙海賊ルードィヒ-
    • 第2章 ドラゴンの翼 第7話 -星の心-
    • 第2章 ドラゴンの翼 第7話 -星の心-
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-4(明暗)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-4(明暗)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-3(嵐の前兆)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-3(嵐の前兆)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-3(嵐の前兆)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-2(竜の舞)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-2(竜の舞)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第6話 -ドラゴンレース-1(夢と現実と)
    • 第2章 ドラゴンの翼 第5話 -2人の王子と水のドラゴン-1
    • 第2章 ドラゴンの翼 第4話 -再会と加奈の想い-
    • 第2章 ドラゴンの翼 第3話 -ドラゴン狩り-
    • 第2章 ドラゴンの翼 第1話 -青き竜星-1
    • 第1章 光の海へ 第9話 -星虹銀河、七色の弓矢-
    • 第1章 光の海へ 第8話 -星虹銀河、宇宙木の音色(後編)-
    • 第1章 光の海へ 第8話 -星虹銀河、宇宙木の音色(前編)-
    • 第1章 光の海へ 第7話 -タイタン号の危機-
    • 第1章 光の海へ 第7話 -タイタン号の危機-
    • 第1章 光の海へ 第6話 -サタンの剣-
    • 第1章 光の海へ 第6話 -サタンの剣-
    • 第1章 光の海へ 第5話 -ブラックホールの謎-
    • 第1章 光の海へ 第5話 -ブラックホールの謎-
    • 第1章 光の海へ 第4話 -原始星よ、永遠に-
    • 第1章 光の海へ 第4話 -原始星よ、永遠に-
    • 加奈の宇宙日記 -花粉モンスターの到来-
    • 第1章 光の海へ 第3話 -氷の花-
    • 第1章 光の海へ 第3話 -氷の花-
    • 第1章 光の海へ 第2話 -アンドロメダE-23号-
    • 第1章 光の海へ 第1話 -トリトン-
    • 第1章 光の海へ 第1話 -トリトン-
    • 光のオルゴール(-プロローグ-旅立ち) その3
    最新記事(画像付)
    にほんブログ村ランキング