第7話 -タイタン号の危機-
2015年05月09日
第1章 光の海へ 第7話 -タイタン号の危機-
王宮のようなサタンの宇宙船は、タイタン号より、数倍もすぐれた船の機能・設備を持っていました。船の位置や航路の設定、エンジンパワーの保守や監視など、すべてコンピュータがしてくれるのです。頭脳コンピュータで、タイタン号の行方をキャッチ出来たのも、科学船ともいえるサタンの船だからかもしれません。
「加奈、タイタン号は、あきらめた方がいい」
サタンは、コンピュータからはじき出される計算と、タイタン号の救出の確率が0であることを、加奈に告げました。
「やっぱり、ブラックホールに落ちてしまったのですか!」
「いいや。磁気星空間だ」
「磁気星空間って…?」
タイタン号は、強力な磁気を持つ、星と星の空間に、閉じこめられていたのです。タイタン号のバリヤーで、かろうじて爆発はまぬがれているものの、へたに動けば、襲撃波面にぶつかってしまうでしょう。そうなれば、こなごなになってしまうのです。

「磁気って、磁石の作用でしょう。それなら、地球だって磁気星でしょう。なぜ、タイタン号を救出できないの」
「加奈、宇宙を理論的に説明することは出来ない。地球星とこことでは、力の作用も磁界の強さも、まるっきり違うのだから」
加奈は、サタンの言っている意味がわかりませんでした。でも、タイタン号が、ブラックホールのように特殊空間に、とじ込められているのは事実なのです。
「それじゃあ、なぜ、加奈だけが助かったの?」
「加奈の首にかけてある、首飾りのせいだと思うが、ちょっと、見せてくれないか」
「氷星の女王様から、いただいた首飾りが?」
サタンは、加奈から首飾りを受け取ると、手首の銀色のブレスレットから光線を出し、首飾りの材質を調べました。
「私の思ったとおりだ。しかし、これだけでは、広範囲の空間移動は出来るはずはないのだが…」
加奈は、ますます、頭が混乱してきました。
サタンの話によると、首飾りの石は、特別な鉱物で出来ていて、それを身につけると、エスパーと同じ能力を持てるということでした。しずくの形をした淡い水色の首飾りが、そんな力を発揮するとは、加奈には夢のことのようでした。
「加奈、他に身につけているものはないか」
「何も…、あ、これかしら。でも、これ、シルトの形見の石だけど」
「いいから、それも、見せてごらん」
加奈は、絹織物のに入った石をサタンに渡しました。サタンはじっと見つめたまま、長い時間、身動きさえしませんでした。
「サタンさん、どうしたんですか」
「さんはいらないと言っているだろう。サタンでいい。加奈、この石は、誰にもらったんだ」
「原始星のシルトさんからです。それが何か?」
「不思議な色を持つ石だ。深く透いこまれそうな神秘的な碧玉だ。分析しても、ただの石玉にすぎないのに…。理由はわからないが、首飾りと石は不思議な反応をするのだろう。加奈が時空を飛べたのも、多分、そのためだと思う」
加奈は、船長の言葉を思い出していました。シルトの石が、時空の道を渡ることも出来ると、言ったことがありました。加奈の危機を救った首飾りと石が、加奈の行くべき道に重要な位置を示すものになろうとは、誰が予測出来たでしょうか。
氷星に降り立たなければ、シルトから石をもらっていなければ、加奈の命ははかなく消えていたかもしれません。なおの事、加奈はタイタン号を見捨てたくありませんでした。「加奈は、タイタン星に行けばよいのだろう。私の船で連れて行ってあげよう」
サタンの言うことに、加奈は何も答えませんでした。涙をポロポロ流しながら、画面に映し出されているタイタン号を、見つめたまま出した。
食事の時間になっても、加奈は食べようとはしません。寝る時間になっても、部屋に戻ろうとはしません。ただ、大好きなタイタン号の行く末を案じるばかりでした。そんな加奈を見てサタンは、最後の手段を使うしかないなと思いました。
「なんと言うことだ。自分のため以外に、それも危険な事をしようとしている私は、サタンの名にも恥じるじゃないか。加奈、ひとつだけ方法はある」
サタンの言葉に、加奈は飛び上がって喜びました。
「喜ぶのは、まだ早い。すごく危険なんだよ。失敗したら、タイタン号とともに目ざめることなく、宇宙の中で永遠の眠りの世界へ入って行かねばならない。その覚悟は、出来るか」
「はい!」
サタンの宇宙での生活は、もうどのくらいになっていたでしょうか。時を忘れるほど、サタンの旅は、長くはてないものでした。それでも、宇宙は限りなく続くばかりです。宇宙に果てがあるのなら、その先の外の世界はどうなっているのでしょう。ほんの切片にすぎないサタンの旅に、時はとどまらない。終わりのない旅の中で、ひとりの少女の出会いで、道を閉ざされたくはないサタンでした。
(ふん。私とあろうものが、こんな事で悩むとは。この少女の存在で、旅の歯車が狂うのはたまったもんじゃない。それにしても、変わった子だ)
サタンが驚くのも、無理のないことでした。
安心したのか加奈は、遅い食事を、サタンと取っていました。さっきの泣き顔はどこへいったのでしょう。ごきげんに、もくもくと食べている加奈を、サタンは不思議に思いました。
「サタン、タイタン号、きっと救えるわよね」
「何も考えずに、ぐっすりとお休み。加奈は、だいぶ体が疲れている。体力がないと、亜空間通路で体が分解してしまうぞ」
「タイタン号は、大丈夫かしら」
「心配しなくても大丈夫。タイタン号のエネルギーは強力だからね。まだ、持ちこたえるだろう」
加奈は部屋に戻り、ベットにもぐり込みました。加奈は信じていました。きっと、サタンは、タイタン号と自分を助けてくれるだろうと…。
『サタン様、星虹国へお帰りになるのですか』
頭脳コンピュータ、メシエは、サタンに話しかけるのでした。
「二度と帰るつもりはなかった。けれども、タイタン号を救うには、星虹国の七色の弓矢と、宇宙木で作った琴が必要なんだ。そう、私の剣もね…」
『サタン様、生存確率は0に等しい。何度やっても同じ確率しかでません。無駄の事をなさるとは、サタン様らしくない』
「仕方がない。自分でもわからない。しかし、やすやすと宇宙に還元されはしない。メシエ、星虹国と磁界との距離と、時空の道をわりだしてくれ。時間がない。ワープをくり返して、星虹国星に飛ぶんだ。加奈が目ざめた時は、星虹国に着いているだろう」
サタンは、グラスを傾けながら、静かな時の流れに身をまかせていました。

大きな窓からは、星虹銀河の姿が見えつつありました。光の強さが時間的に変化する恒星、変光星群の中を船は進んで行きます。星虹銀河の光の渦は、サタンの船を、一気にのみこんでしまいました。
「加奈、タイタン号は、あきらめた方がいい」
サタンは、コンピュータからはじき出される計算と、タイタン号の救出の確率が0であることを、加奈に告げました。
「やっぱり、ブラックホールに落ちてしまったのですか!」
「いいや。磁気星空間だ」
「磁気星空間って…?」
タイタン号は、強力な磁気を持つ、星と星の空間に、閉じこめられていたのです。タイタン号のバリヤーで、かろうじて爆発はまぬがれているものの、へたに動けば、襲撃波面にぶつかってしまうでしょう。そうなれば、こなごなになってしまうのです。

「磁気って、磁石の作用でしょう。それなら、地球だって磁気星でしょう。なぜ、タイタン号を救出できないの」
「加奈、宇宙を理論的に説明することは出来ない。地球星とこことでは、力の作用も磁界の強さも、まるっきり違うのだから」
加奈は、サタンの言っている意味がわかりませんでした。でも、タイタン号が、ブラックホールのように特殊空間に、とじ込められているのは事実なのです。
「それじゃあ、なぜ、加奈だけが助かったの?」
「加奈の首にかけてある、首飾りのせいだと思うが、ちょっと、見せてくれないか」
「氷星の女王様から、いただいた首飾りが?」
サタンは、加奈から首飾りを受け取ると、手首の銀色のブレスレットから光線を出し、首飾りの材質を調べました。
「私の思ったとおりだ。しかし、これだけでは、広範囲の空間移動は出来るはずはないのだが…」
加奈は、ますます、頭が混乱してきました。
サタンの話によると、首飾りの石は、特別な鉱物で出来ていて、それを身につけると、エスパーと同じ能力を持てるということでした。しずくの形をした淡い水色の首飾りが、そんな力を発揮するとは、加奈には夢のことのようでした。
「加奈、他に身につけているものはないか」
「何も…、あ、これかしら。でも、これ、シルトの形見の石だけど」
「いいから、それも、見せてごらん」
加奈は、絹織物のに入った石をサタンに渡しました。サタンはじっと見つめたまま、長い時間、身動きさえしませんでした。
「サタンさん、どうしたんですか」
「さんはいらないと言っているだろう。サタンでいい。加奈、この石は、誰にもらったんだ」
「原始星のシルトさんからです。それが何か?」
「不思議な色を持つ石だ。深く透いこまれそうな神秘的な碧玉だ。分析しても、ただの石玉にすぎないのに…。理由はわからないが、首飾りと石は不思議な反応をするのだろう。加奈が時空を飛べたのも、多分、そのためだと思う」
加奈は、船長の言葉を思い出していました。シルトの石が、時空の道を渡ることも出来ると、言ったことがありました。加奈の危機を救った首飾りと石が、加奈の行くべき道に重要な位置を示すものになろうとは、誰が予測出来たでしょうか。
氷星に降り立たなければ、シルトから石をもらっていなければ、加奈の命ははかなく消えていたかもしれません。なおの事、加奈はタイタン号を見捨てたくありませんでした。「加奈は、タイタン星に行けばよいのだろう。私の船で連れて行ってあげよう」
サタンの言うことに、加奈は何も答えませんでした。涙をポロポロ流しながら、画面に映し出されているタイタン号を、見つめたまま出した。
食事の時間になっても、加奈は食べようとはしません。寝る時間になっても、部屋に戻ろうとはしません。ただ、大好きなタイタン号の行く末を案じるばかりでした。そんな加奈を見てサタンは、最後の手段を使うしかないなと思いました。
「なんと言うことだ。自分のため以外に、それも危険な事をしようとしている私は、サタンの名にも恥じるじゃないか。加奈、ひとつだけ方法はある」
サタンの言葉に、加奈は飛び上がって喜びました。
「喜ぶのは、まだ早い。すごく危険なんだよ。失敗したら、タイタン号とともに目ざめることなく、宇宙の中で永遠の眠りの世界へ入って行かねばならない。その覚悟は、出来るか」
「はい!」
サタンの宇宙での生活は、もうどのくらいになっていたでしょうか。時を忘れるほど、サタンの旅は、長くはてないものでした。それでも、宇宙は限りなく続くばかりです。宇宙に果てがあるのなら、その先の外の世界はどうなっているのでしょう。ほんの切片にすぎないサタンの旅に、時はとどまらない。終わりのない旅の中で、ひとりの少女の出会いで、道を閉ざされたくはないサタンでした。
(ふん。私とあろうものが、こんな事で悩むとは。この少女の存在で、旅の歯車が狂うのはたまったもんじゃない。それにしても、変わった子だ)
サタンが驚くのも、無理のないことでした。
安心したのか加奈は、遅い食事を、サタンと取っていました。さっきの泣き顔はどこへいったのでしょう。ごきげんに、もくもくと食べている加奈を、サタンは不思議に思いました。
「サタン、タイタン号、きっと救えるわよね」
「何も考えずに、ぐっすりとお休み。加奈は、だいぶ体が疲れている。体力がないと、亜空間通路で体が分解してしまうぞ」
「タイタン号は、大丈夫かしら」
「心配しなくても大丈夫。タイタン号のエネルギーは強力だからね。まだ、持ちこたえるだろう」
加奈は部屋に戻り、ベットにもぐり込みました。加奈は信じていました。きっと、サタンは、タイタン号と自分を助けてくれるだろうと…。
『サタン様、星虹国へお帰りになるのですか』
頭脳コンピュータ、メシエは、サタンに話しかけるのでした。
「二度と帰るつもりはなかった。けれども、タイタン号を救うには、星虹国の七色の弓矢と、宇宙木で作った琴が必要なんだ。そう、私の剣もね…」
『サタン様、生存確率は0に等しい。何度やっても同じ確率しかでません。無駄の事をなさるとは、サタン様らしくない』
「仕方がない。自分でもわからない。しかし、やすやすと宇宙に還元されはしない。メシエ、星虹国と磁界との距離と、時空の道をわりだしてくれ。時間がない。ワープをくり返して、星虹国星に飛ぶんだ。加奈が目ざめた時は、星虹国に着いているだろう」
サタンは、グラスを傾けながら、静かな時の流れに身をまかせていました。

大きな窓からは、星虹銀河の姿が見えつつありました。光の強さが時間的に変化する恒星、変光星群の中を船は進んで行きます。星虹銀河の光の渦は、サタンの船を、一気にのみこんでしまいました。
tritonsora at 14:33|Permalink│Comments(0)















































































