2016年04月

2016年04月29日

すみれの説明案内板3

光のオルゴールの世界

 光のオルゴールも佳境に入ってきましたので、もう少し説明をしたいと思います。

 はるかなる宇宙の海で、限られた銀河の中での惑星のお話です。

 星虹銀河には、星虹星とタルタロスのいる銀星、加奈が4人の王子(スチュワート・レッド・ロミオ・ジュード)に出逢った竜星があります。そして、宇宙海賊ルーディヒと降り立った星、アルディ星も星虹銀河の惑星です。

 レッド王子が治める流星銀河での惑星のお話は、続・光のオルゴールで登場します。

 そしてもう一つ、(第4章)
 スクトゥム銀河は、これからサタンと加奈が向かう銀河です。

 ※星虹銀河
 ※スクトゥム銀河
 ※流星銀河

 たくさんの登場人物がいますが、すべてこの3つの銀河の中の惑星の住民で、物語のかなめになっています。この3つの銀河を覚えておいて下さいね。

加奈の説明案内板3


2016年04月16日

第3章 星の紋章 第9話 -風読みの言霊-

 東洋風の大きな屋敷から里の姫が現れました。
 “あっ!”
 加奈は思わず声を出しそうになりました。髪の色と瞳の色は違いましたが、その姫はサラ王女そっくりだったのです。
 竜星の王族の衣装とは違っていましたが、美しい長めの衣装を身にまとい、髪には不思議なかんざしを挿し、独特な色気さえもありました。風読みの言霊2

「皆の者、ごくろうさまです。今年は桑の葉の出来も良く、無事、お蚕様も繭を作り始めています。今が一番大事な時です。さらに結界を強くして、夜の見回りも今日から始めます。糸をつむぐ時まで、きつね族から守らねばなりません。心して一日を過ごすように」
「オ~!! オ~!! オ~!!」
 兵士たちは何度も大声で叫び、姫の忠誠を誓っているようでした。

 あいさつが無事終わると、あの熊ゴジラが叫びました。
「これより少し休憩の後、訓練を行う。笛の音を合図に集まるように」
 兵士たちは少しホッとしたように、ゾロゾロと又、広場の方へ歩いていきました。
「それにしてもびっくりだなあ。あの姫様、サラ王女にそっくりだったぜ。きつい所まで似ているぜ」
「ルーディヒ、きついはないだろう」
「シリウス、お前は知らないんだよ。おれは子供の頃から知っているからな。サタンやスチュワートが大変だったんだ」
「え? ルーディヒ、何故、サラ王女やスチュワート王子を知っているの?」
「俺は一応あいつらとは、母親の違う兄弟だからな」
「???」
「なあ、サタン。お前どうした、顔色が悪いぞ!」
「いや…何でもない。悪いが一人にしてくれ」
 サタンは一人、広場から外へ出てしまいました。

「何だあいつ、どうしたんだ」
「サタンだって俺らと同じで、いろいろあるのさ。そっとしておいてやろうぜ」
「あいつ、この頃おかしいぞ。何か嫌な予感がするな。あの姫様、ずっとサタンを見ていたし…。あの姫様、いくつぐらいだろうな」
「さあ、サラ王女より年上に見えるな」
「それじゃあ、俺たちと同じ19才かな」
「うそ~ぉ~!!」
「うわ、びっくりした。加奈、どうしたんだ?」
「皆、19才なの~!?」
「そんなに驚くことかなあ…」
 加奈は、サタンたちはもっと大人だと思っていました。顔立ちが整って長身で、サタンは落ち着いていたし、加奈の面倒もよく見てくれていたからです。

 加奈は凄く恥ずかしくなったのと同時に又、あの時のことを思い出さずにはいられませんでした。あの夜のことを…。
 あまり考えたくはありませんでした。あの夜、何があったか、加奈は想像だけで決めつけてはいけないと思いました。それにあの姫様は、顔はそっくりでも、サラ王女ではないからです。

「ピィ~、ピ~ィ~」
 笛の合図です。
 サタンも外から走ってきました。広場に集まると、別の上官がいました。
「これより訓練を行う前に、精神統一と心の虫を取り除くために、呼吸法の訓練を行う。全員その場に座り、始め!!」
 今までザワザワじていたのが、嘘のくらい、静かになりました。
「それでは始める。息を深~く吸って吐いて~。腹で呼吸だ、鼻で呼吸するな!」

 それが終わると、色違いのはちまきをつけさせられました。
 私とルーディヒ、シリウスとサタンと違う組になってしまいました。私たちは青色、サタンたちは赤色でした。

 ドーンドーンドーン
と、太鼓が鳴り響くと、屋敷の2階からやぐらまで長く続く廊下に、姫様が現れました。そして、一番高いところに座りました。
「これより青、赤組に分かれ、試合を始める。決められた者は1対1で戦い、最後の2人になったら、道術ではなく、好きな武器で戦うこと! ただし、武器を離した者を負けとする」

 シリウスとルーディヒ、サタンはさすがに強く、あっという間に次々と倒していきました。加奈も今まで戦って来ていたし、道術は祖父方の流派だったため、勝ち進んでいきました。
 加奈の柔らかな風のような道術に、サタンたちはあっけにとられました。何故なら、そんな加奈の姿を見るのは、初めてだったからです。まるで別人のような加奈の姿でした。

「わぁ~、きれいに型が決まっているなあ。女にしておくにはもったいないな。でも、この分だと…。まずいな、加奈とサタンになるぞ」
 実際、シリウスとルーディヒ、そして、加奈とサタンの組み合わせになってしまいました。
 シリウスとルーディヒは互角で、なかなか勝負がつきませんでしたが、ちょっとの差でルーディヒが勝ちました。

 加奈とサタンが向かい合います。練習の時に、時々、剣を合わせることはありましたが、こうして向かい合うと、何か変な気がしました。
「さあ、加奈、あれから随分と強くなったはずだ。遠慮なく向かって来い! さあ、構えて!」
 同じ構え方で、2人はまるで剣舞のようで、その剣さばきに、皆、見入ってしまっていました。
 柔らかな加奈の剣と、鋭さのあるサタンの剣が、嬉しそうに踊っているようで、皆、ワイワイそれぞれ2人の応援を始めました。

「加奈の剣は、何と言うか舞のようだな。モンスターには使えないんだから、今まで戦えなかったはずだ」
「でも、シリウス、サタンも楽しそうだぞ」
 サタンの剣が加奈の剣を宙に浮かせ、ようやく試合が終わりました。皆、試合というのに、楽しそうにワイワイ、2人の所まで近寄ってきました。みんな笑顔でした。

 そっと強い視線の先を見ると、やはりあの姫様でした。加奈を見る目が、サラ王女と同じでした。加奈はその目の意味するものを理解していました。この姫様も王女と同じように、サタンが好きなのだろうと…。たとえ今は加奈が少年だとしても、サタンに近づく者を許せないのだろうと…。
「こら、お前たち、何、騒いでいる。試合は終わったが、訓練は終わらないぞ。情けないぞ。いつも勝つのはこの4人だ。少しは他の連中も太刀打ちできるようにならないのか! さあ、今日は外での訓練だ。担当の者は、武器庫で、弓を用意しろ!」
「おっ! 今度は弓だぞ。加奈の得意分野だな。でも、俺たちも負けないぞ」

 ルーディヒは何か嬉しそうでした。
「ルーディヒ、お前、何か、楽しそうだな」
「そりゃあ楽しいさ。こうしてみんなで訓練するんだから、銀星との訓練とは、比べものにならないほど楽さ。それ以上に楽しく出来るのが嬉しいのさ」
「そうだな、銀星の訓練は地獄の苦しみだったしな…。考えてみれば、星虹銀河の消滅は悲しいが、銀星も無くなるのだから、良かったかもしれないな」
「甘いな二人とも。あいつが星と共に消滅すると思っているのか。あいつは死なない。宇宙の闇がある限り…」
 サタンは、そうつぶやきながら、外の方へ歩いていきました。

 ルーディヒもシリウスも分かっていたことでした。タルタロスは他の銀河へ移動するだろうと。
 どこへいってもタルタロスは銀河を支配し、罪の無い星人を洗脳し、改造していくことでしょう。仮にタルタロスがいなくなっても、あのタルタロスの分身は、いたる所に存在しているのだから。

 里の生活も幾日が過ぎ、規則正しい生活と訓練のたまもののせいでしょうか、加奈も少しづつ、体力がついて、元気になっていきました。
 サタンたちも呼吸法の訓練のおかげで、心の闇のコントロールが前より楽になったようでした。
 しかし、楽しい生活ばかりとは限りません。

 サタンは、姫様の呼出しが多く、帰ってくると一日中話をしないし、ルーディヒは、里の女たちと仲良くなり、いつも女の人とばかりいるし、シリウスは、里の薬草が気になるのか、しょっちゅう外歩きばかりし、外回りも率先して志願する始末です。

 加奈は、3人の様子にあまり意見するつもりはありませんでした。それより、お蚕様の世話に夢中でした。女たちと桑畑で桑の葉を取り、お蚕様の屋敷(?)に葉をいっぱい敷きつめると、お蚕様が嬉しそうに葉を食べる音がリズミカルに聞こえます。別の棟でも、繭玉を糸にしている様子、そし、機を織る音が心地よくてたまりませんでした。
 もともと養蚕は、加奈の親戚の家でも盛んで、科学が進歩したといっても、細々とやっていたおかげで、まだ続いていたのです。

 桑の葉畑では、女たちが歌を歌い、桑の葉を摘んでいきます。その歌の中に加奈も入り、お蚕様の作業をする女たちとだいぶ仲良くなっていきました。
 モンスターが現れないので、気が楽でしたが、時折、不思議な音色が気になっていました。その音色は、風とともに流れていきます。

「又、だわ」
「え?」
「カナも聞こえるでしょう、あの音色は、きつね族の統領の笛の音色なの。何を血迷ったか、姫様に夢中なのよ。所詮、結ばれない縁よ。敵同士だし、お互い好きならいいけど、姫様はサタン様を昔から好きだしね」
「でも、サタン様は、全然その気が無いし、身分も違うし、姫様も可哀想よね」

 まるで、サラ王女と同じと思いました。しかし、ここは星虹王国ではありません。まして、サタンがここに居たいわけでもないのに、まるで昔からいたような話です。
「こら~! カナ~! 今日も訓練をさぼるつもりか~!!」
「あっ! 熊ゴジラだ」
「クスクス、カナったら、男のくせに訓練が嫌いね」
「今日は風読みの術の訓練だ! お前がいないと訓練にならないだろうが! 早く来い」
「いたい…そんなに強く引っ張るなよ。ぼくは華奢なんだからな」
「何! 一丁前に口答えして!」
「いたいよ!」

 加奈の男言葉もさまになってきました。心の中で自分がだんだん雑になっていくようで、怖くなる時もありました。一体、いつになったら、あのアルディ星に戻れるのだと思うばかりでした。
 それと、風読み術は、加奈の先祖代々、引き継がれている家の秘術でもありました。この星で何故、その術があるのかも不思議でした。風読み術は、加奈は苦手でした。
 加奈の母親は、強いオーラを持ち、巫女的能力も強く、道術、陰陽師、弓、剣道も人並み以上に優れ、その家を守る当主となるはずでした。母はそれを嫌い、まるで違う宇宙大学の方へ進み、大学院では、宇宙科学を専攻し、今では博士号まで取って、宇宙パイロットの父と結婚し、加奈を生んだのでした。
 両親は仕事で忙しいため、結局、加奈は祖父母に育てられ、必然的に巫女的修行を叩きこまれてしまったというわけです。しかし、いつでも祖母に怒られているばかりでした。必ず最後には、お前の母さんはもっと強いオーラを持っていた、邪念なく呪文を唱えるし、舞も歌も上手だったと…。
 風読み術はいつも失敗ばかりで、祖母はあきれて、途中で教えてくれなくなりました。祖母の悲しい顔を見るたび、加奈はひどい劣等感に陥りました。
 そんな事もあり、加奈は全寮制の学校を選んだのでした。まるで祖母から逃げるように。
それなのに、大好きな宇宙に来て、結局は苦手とする舞や術を使うことになろうとは、何の因果でありましょうか。

風読みの言霊

 険しい高台に皆が登っていきます。久しぶりの山道はきつく、日差しも強くなってきました。
「おい、カナ、今日は大丈夫なのか」
 加奈と同じ年ぐらいのジークという少年兵が尋ねました。ジークとは年が近いので、話も合い、仲良し仲間でした。
「何が?」
「今日は風が吹いていないぞ。又、失敗するんじゃないか。心配だよ」
「う~ん」
「風読みは、姫様とお前しか出来ないんだぜ。風読みで結界を作る場所も決まるし、今年はきつね族の笛の音がやたら聞こえるし、先行き不安だぜ」
「おい、あまりカナを困らせるなよ」

 横から話しかけたのは、同じ仲良し仲間のブルーという少年兵でした。
「風読みは難しいんだ。もし、失敗しても、俺たちの戦力で補えばいいんだ」
「ブルー、何言ってんだよ。俺たちはカナより弱いんだぜ。見かけはカナが一番弱そうなのにな」
「ああ~、サタンたち位、強くなれたらいいのになあ」
「俺はサタンが嫌いだ!」
「お前が嫌いなのは、サタンがカナをいつも大事にしているからだろう」
「なんだとう、それじゃあ、まるでやきもちみたいじゃないか」
「おりゃ、そうじゃないのか」
「どういう意味だよ!」
「ちょっと二人ともやめろよ」

 加奈は必死に止めるも、2人はもう取っ組み合いのケンカをしそうでした。
「お前ら、何やってんだよ!」
 二人を押しとどめたのは、カナたちの仲間兵のリーダー格のフェルスという年上の兵士でした。
「なんでお前たちはカナのこととなると、何故いつもそうなるんだよ。カナが女だったら、良かったのになあ」
「え~~~!!」
加奈は、一瞬、ドキッとしました。
「アハハ、冗談冗談。皆、カナのことが好きだってことさ。里の女の子より、カナの方がかわいいからな。明るくて、強くて、やさしくて、気が利くしね」
「そんなこと言われても、ちっとも嬉しくない」
「アハハハ、ごめんごめん。カナは男だからね」
 皆は、カナの顔を見ながら、又、笑い合いました。この気のいい優しい仲間たちの事を思うと、加奈は、何か騙しているようで、気が引けました。

 高台に着くと、加奈はひとり瞑想を始めました。皆はそんな加奈の様子を、心配げに見つめていました。
 ヒュ~~~ルルルルル~~
 風の音がします。加奈は風に話しかけます。
「風よ教えておくれ。風の道を教えておくれ、私のそばでささやいて、私の言霊をあなたに届けます」
  すると風は、加奈の体のまわりに近づいて、やさしく吹きかけました。
 ヒュルルル~~~

 加奈の目に風の道が見えました。そして、次の風の集まる場所が分かりました。それを教えようとして、後ろを振りかえようとした時、突然、黒い風が吹き抜けました。
 その黒い風は、加奈のまわりにまとわりつき、その風が止んだとき、カナの姿はありませんでした。

「カナ!!」
「カナはどこだ!!」

 高台にはもう風は吹いていませんでした。
 一体、カナはどこへ行ってしまったのでしょうか。
 仲間たちのカナの呼ぶ声が、山にこだまして、その声がカナに届く日は来るのでしょうか。



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