2019年01月02日
第5章 最終章 別れ路 -光と影-⑥-
「うわあ~!! 一面の花畑だあ~!! なんて、綺麗なの! わあ~いわあ~い!!」
サタンが連れて来てくれた花畑は色とりどりの花が咲きほころぶ、まるで別世界のような美しさでした。加奈と竜斗は大喜びしながら、飛び回っていました。
「加奈は木々や植物が大好きだからね。本来の宇宙の旅はよく知らないが、少しでも自然を残すために、その生命の源を探す旅だったらしいが…。少しでも、花の思い出が出来ればと…ね…」
「すみません、サタン様のお気持ちも知らずにさっきは…」
「ライ、いいんだよ。何かあったか見当はつく。ライがいてくれて良かった。加奈は困っている人がいると、自分のことをかえりみず、無理をしてしまうから。でも、加奈の星は、強暴なモンスターはいないらしいから、無理はしないだろう」
加奈が花で作った美しい花の首飾りを持って、二人の元へ戻って来ました。サタンとライに花の首飾りを掛けて、そして、自分は花の冠を被りました。
「サタン、ありがとう。お礼に花の舞を踊るね」
加奈は歌いながら、柔らかな動作で舞い始めました。花畑の中で踊る加奈は、花の妖精のようでした。
その舞を見ながら、サタンはもう二度と会うことが無いと思うと、余計に胸が苦しくなるのでした。ライも加奈に仕える事も出来ず、地球に行く事も叶わず、やるせなくサタンと同様に胸が苦しくなるのでした。
優しい風が加奈の髪を揺らし、花びらが妖精のような加奈の踊りと共に、舞い踊るのでした。
"時よ止まっておくれ
せめて今、このひとときだけでも
愛しいあなたとの、このひとときを
でも、時は留まらない
星々にも終末があるように
ふたりの時も
また、時を刻む"
3人は、サタンの宇宙船の戻り、何度かのワープを重ねて、アンドロメダの軌道に入り、イカロス号にライと加奈は乗り込もうとしていました。
「加奈、気をつけて行くんだよ。地球へ帰ってからも無理をしないように、元気で暮らすんだよ」
「サタン、ありがとう。私のせいでサタンに迷惑ばかり掛けてしまってごめんね。でも、加奈は…」
加奈の瞳から溢れるほどの涙が流れ、声が詰まって本当は言いたかった一言の言葉を、言う事が出来ませんでした。
「加奈…」
二人は見つめ合い、言葉を出すことはしませんでした。ライまでも涙が流れてしまう程、切ない二人の姿でありました。
イカロス号に乗り込む時、加奈は泣きながらサタンの名を何度も呼び続けましたが、サタンは振り返る事はありませんでした。
サタンは自分の部屋の窓から、イカロス号を見送っていました。サタンの後ろ姿はあまりに寂しく暗く、宇宙の闇の中へと溶け込んでいってしまう程でした。
星々はそんな二人を思うのか、輝きを増して色とりどりに光り始め、光がメロディを奏でているようでした。しかし、そんな美しく輝く星々の間から、炎のように不気味に光る二つの赤い目が、嘲笑うかのようにサタンと加奈を見つめていました。
完
あとがき
長い間、読んで下さり、ありがとうございました。
書き始めた時には、まさかこんなに長くかかるとは思いませんでいたし、最初のテーマから随分と内容がかけ離れてしまいました…。
でも、どうにか最終章までたどりつきました )^o^(ホッ
けれども、人が成長して年月を重ねるように、サタンと加奈のその後も書いてみたいと思い、続・光のオルゴールを執筆中です。
続・光のオルゴールでは、新しいメンバーが加わります。
彼女たちの活躍も応援して下さいね。