2015年09月05日
第2章 ドラゴンの翼 第5話 -2人の王子と水のドラゴン-1
城の廊下を凄い速さでレッドが走っていました。
「レッド、うるさいな、こんな朝早くにどうしたんだ?」
「スチュワート、加奈を知らないか?」
「加奈なら、部屋で寝ているはずだが…」
「それが、いないんだよ!」
「そんなバカな! まだ病み上がりでどこへいくんだよ」
「昨日の加奈の様子がおかしかったんだ。なぜもっと気をつけてあげなかったんだろう。まさか、サタンが連れ去ったんじゃないだろうな!!」
レッドは、また、凄い速さで城の正面門の方へ走って行きました。
「レッド、サタンはサラのところだよ」
「城下町の方へ行ってみるから、スチュワートはサラの所へ行ってみてくれ」
レッドは凄く不安でした。加奈までイザベラのようになるか心配だったのです。年より幼く、頼りげない加奈にレッドは、最愛の妹のイザベラを重ねずにはいられなかったのです。
「サタンに関われば、悪い方しかいかない。くそ、加奈まで死なせてなるものか!!」
レッドとスチュワートの心配をよそに加奈は白ドラゴンをリュックに入れて、城下町を歩いていました。
ドラゴンレースの前とあって、城下町は祭りのような華やかさでした。
昨日のモンスターの事がまるで夢のようで、城下町の人々はとても幸せそうな感じがしました。誰もが祭りを楽しんでいて、店の前では、アコーディオンみたいな楽器を鳴らして、老人たちが歌を歌ってました。子供たちは走り回り、明るい町の様子に加奈もようやく笑顔を取り戻してきました。
「加奈、加奈じゃないか」
自分の呼ぶ声の後ろを振り向くと、ロミオとジュードがびっくりしたような顔をして立っていました。
「あ、ロミオとジュード、またお酒を飲みにきたの?」
「ひどいなあ、人をのんべい扱いして」
「それより加奈、体はもう大丈夫なのか。城から出る時、スチュワートがレッドに言ってきたのか」
「すぐ戻るつもりだから、言ってないけど…」
「まずいな、スチュワートはいいけど、レッドに知れたら大変だ。城まで送るから戻ろう」
「えー! だって今、来たばかりよ。もう少し、だめ? 私だって気分転換したいもの」
「加奈!!」
後ろからまた、声がしました。そこにはスチュワートとサタンが立っていました。
加奈が返事をしようとした時、サタンの手が加奈の頬を叩きました。加奈はなぜサタンに叩かれるのか分からず、加奈の目に涙が溢れてきました。
「加奈、なぜ、黙って城を出たんだ。どれだけみんなが心配したのかわからないのか。昨日あんなに具合が悪かったのに、心配するだろう!」
加奈は頬を手でさすりながら、涙をいっぱいためて、
「そうよ私は、心配ばかりかける人間よ。戦うこともできず、皆の力にもなれず、どうせ足手まといの人間よー! サタンなんか大嫌い、大嫌~い~!!」
加奈は泣きながら走って行きました。走っていく方向にレッドをぶつかってしまいましたが、加奈は何も言わず、走り去っていきました。
「加奈はどうしたんだ。なんで泣いているんだよ」
レッドの目の前に王子とサタンの姿が目に入りました。
「おい、サタン! お前、加奈に何したんだよ。なぜ、加奈を泣かすんだよ!」
レッドはサタンの上着の襟をつかみ、凄い剣幕で詰め寄りました。
「やめろよ、レッド!」
「スチュワート、なんでお前はいつもサタンをかばうんだ! こいつは名前のとおり、悪魔なんだぜ。だから、イザベラもサラも加奈にも害が及ぶんだよ。加奈に何かあってみろ、ただじゃあおかないからな!」
「やめろよレッド、そんな事している場合じゃない」
ロミオもレッドを押しとどめました。
「今は加奈が心配だ。ぼくとジュードで探すから、皆は城で待っててくれないか」
「俺もいくよ」
「レッドはだめだ! ぼくとジュードにまかせろ。加奈を島の方へ連れていくから。帰りは遅くなるけど、なるべく早めに帰れるようにするよ」
「島に行くのか?」
「加奈には体より心の休息が必要だ。少しでも、気分転換になってくれれば嬉しいけれど…」
ロミオは今度はサタンに向かって言いました。
「サタン、変わったな。昔のお前だったら、決して叩いたり怒ったりしなかったはずだ。加奈のことを思えば、やさしく諭せばいいだろう。 昔、イザベラやサラにしたように」
サタンは何も言わず、ひとり違う方向へと歩いていきました。
「サタン、城へは戻らないのか」
「用事を済ませてから城へ戻る」
なぜかサタンは、多くのお店が建ち並ぶ方へと歩いていきました。
美しい衣装を着た女たちがきれいな音楽にのって踊っていました。その回りに人垣が出来て人々の歌声も聞こえてきました。
しかし、加奈の耳には何も聞こえて来ませんでした。
叩かれた頬の痛さより、心の痛さの方が辛く悲しかったのです。涙がとめどなく流れて、立ち止まった足元さえにも涙の粒が落ちていきました。
動かない加奈に、白ドラゴンはリュックから出て、加奈の足元でオロオロとぐるぐる回っていました。
「加奈、ここにいたのか!」
ロミオとジュードが、かけ寄って来ました。
ジュードはポケットからハンカチを出して、やさしく加奈の涙を拭き取りました。
「加奈、もう泣くなよ。可愛い顔が台無しだ。ほら、目はふくれて充血して、モンスターみたいな目になっているぞ」
「え? ほんとお!」
「うそ、うそだよ、アハハハ」
「ひど~い、ジュードったら!」
3人の笑い声が町の中に広がっていきました。ようやく加奈も、ロミオとジュードのやさしさに触れて、気持ちが落ち着いてきました。
「加奈、ぼくたちこれからドラゴンの調教に行くんだけど、一緒に行かないか。もう少ししたら、うまく乗れるようになるから加奈を乗せてあげるよ」
「え…でも、ドラゴンって女の子は乗れないのでしょう」
「加奈は大丈夫だよ、その証拠にほら!」
ロミオの指さす所に、加奈の足にぴったりくっついている白ドラゴンの子供が、3人の顔を代わる代わる見つめているのでした。
「それにしても、この白ドラゴン、よっぽど加奈が好きなんだな。絶対離れないし…」
「あ~俺、ドラゴンになりたいなあ。加奈にぴ~ったりくっつけるし」
「ジュードったら、もうお」
加奈の顔が真っ赤になり、ロミオもジュードも大笑いしたのでした。何より二人の王子たちは、純粋で年より幼く心も可愛い加奈がとてもいじらしく、いとおしく思うのでした。
ドラゴンに乗るには、加奈の着ている服はダメだということで、仕立屋が並ぶ王室専用の洋服店へ立ち寄りました。店のドアをあけ、ロミオがふと道の十字路の方を見ると、サタンの姿を見たような気がしました。
「あれ、なんであんなところにサタンがいるんだ。ここは仕立屋ばかりのはずなのに…見間違えかな…」
「何ぶつぶつ言ってんだよロミオ。早くあの服を加奈に見せようぜ」
「あの服って?」
「見てのお楽しみさ」
二人の王子は加奈のために、何枚かの生地を用意してくれたのでした。一枚は出来上がりの服でしたが、チェックの帽子と上品なブラウスに長めのスカートは、帽子とお揃いで、ひもで結ぶブーツはとても可愛らしいデザインでした。
「わあ~、昨日はこんな服見かけなかったのに」
「昨日は普通のお店だったしね、ここは王家御用達で、特別な時に着る服を仕立てる店なんだ。ぼくたちの服は普段は町民と同じ店で買うけど、王家の行事の時はここで仕立ててもらうんだよ」
「そ…それじゃあ、私が着るのまずいんじゃないの…」
「ぼくたちのプレゼントだから大丈夫。さっ、寸法が取り終えたら服を着替えて出発だ」
二人にもらった服は加奈に良く似合っていました。一見、可愛い服ではありますが、ところどころにいろんな仕掛けがありました。
武器をしまうポケットが、腰と足のもものベルトに2カ所、長めのスカートといっても中がもこもこになって風に吹かれてもスカートはめくれないし、お腹も冷えないから、そして、もこもこペチコートの中にも鞭のベルトさえもあったのです。
隠しポケットは、なんと10箇所もあるのが外見から全然わかりませんでした。















































































