2015年08月30日
第2章 ドラゴンの翼 第4話 -再会と加奈の想い-
「加奈、伏せろ」
聞いたような声がしたかと思った瞬間、七色の光が大きく輝き、銀の剣のひとたちが見えたのと同時に、巨大モンスターは水しぶきをあげて、大きく倒れていきました。
まるでスローモーションのようにモンスターは湖の中へと、吸い込まれるように倒れていきました。
水際にはサタンの姿がありました。銀の剣には、モンスターの血がしたたり落ちて赤い血の色が、黒い髪の色と対照的にサタンのいつもの凍るほどの黒い瞳は、寒気さえ感じるほどでした。
「加奈、無事か!」
近寄ってくるサタンに加奈は少し躊躇してしまいましたが、サタンに向かって走りより抱きついてしまいました。
「サタン、遅い、遅いよ! 心細かったよ、アーン、アーン」
赤子のように泣きじゃくる加奈に、サタンはそっと、加奈の頭を撫でながら、
「ごめん、加奈のいる場所がつかめなかった。どこもケガをしていないか」
「うん…」
二人の様子に四人の王子たちは言葉を失っていました。
しかし、再会もつかの間、突然レッドがサタンに向かって大きな剣を向けたのでした。
「サタン、いいところで出会った! イザベラの仇、今こそ、つけようぞ!」
斬りかかるレッドにスチュワートは、止めに入りました。
「やめろ! レッド、イザベラのことは事故だ。お前も承知していたはずだ!」
「くそお、こいつさえ、こいつさえ、銀星から戻ってこなければ、イザベラは死なずに済んだんだ。サラだって、こいつに会わなければ、苦しまずに済んだんだ」
何がおきているのか、加奈はわかりませんでした。イザベラとは誰のことなのか、スチュワートのサラ王女とサタンとは知り合いだったのでしょうか。
加奈はもうパニックを起こしていました。
「ぐっ…」
加奈は、激しい吐き気に襲われました。
「ゲホゲホ」
吐きたくても吐く事が出来ず、凄い息苦しさを感じ、気が遠くなっていく気がしました。
「加奈、どうした!!」
サタンが真っ青な顔の加奈を抱き寄せました。
「スチュワート、どこか、ゆっくり休ませる場所は無いか!!」
「ここから、城まで空間移動…」
「だめだ! 加奈の体が凄く弱っている。こんな体で、空間移動したら、加奈の心臓が耐えられない! 馬だ、馬で城へ行こう!」
サタンは自分のマントで加奈をくるみ、四人の王子たちは、馬で城へと急ぎました。途中、モンスターが襲いかかってきましたが、サタンの凄い殺気と威圧感に恐れおののき逃げていきました。
気を失っていた加奈は、その後のことは覚えていませんでした。気がついた時は、前にスチュワートに案内してもらった部屋のベッドの中でした。まだ頭の中がもやもやして加奈は夢を見ていたのかと思いました。
「夢かあ…。随分リアルな夢だったなあ…」
ベッドから出ようとした時、ふとんの中から何か転げ落ちたような気がしました。
「え!! えぇ~~!!」
白ドラゴンの子供が、ごそごそと加奈のふとんの中に入ってきて、大きなあくびをしました。
「夢、夢じゃなかったんだ! そ…それじゃあ、サタンは?サタンは?」
あわててベッドから飛び起きたので、ふとんの裾に足を引っかけ、加奈はズド~ンとベッドから転がり落ちてしまいました。
「いたたたた…」
凄い音だったのか、部屋のドアがノックされました。
「加奈、どうした! 入るよ」
サタンが心配そうにかけ寄って来ました。軽々と加奈を抱くとベッドに戻し、額に手を当て、熱が下がったが、確認するサタンでした。
「加奈、いつも言っているだろう。体力をつけないとダメだ。今のままの体力だと宇宙の旅もきつくなる」
「わかっているってば! 私は弱々の地球人ですよ。強靱なサタンとは違いますよ!」
「やれやれ、そのくらい元気が出たら、もう大丈夫だな」
「それよりサタン、七色の弓矢は、銀星ではなく、この星にあるみたいなの」
「そうみたいだな」
「え? そうみたいって、知っていたの?」
「スチュワートに聞いたよ、元々はサラの持ち物だし、あるべき所に戻ったということだが…」
「七色の弓矢って、星虹銀河の宝物でしょう。借りるわけにはいかないわよね…」
「大丈夫だ、何とかなる。さあ、もう少し休んだ方がいい」
「ガウガウ」
さっきまで大人しくしていたドラゴンが、サタンに向かって軽く吠えました。
「え?」
サタンは四人の王子たちのようにびっくりはしましたが、何故か、白ドラゴンを触っても噛みつかれませんでした。それどころか、サタンの手をペロペロなめて、猫のように喉を鳴らすほどでした。
「あらら、サタンは噛まないわ。四人の王子たちはみんな噛まれたのに…びっくりだわ!」
「びっくりするのはこっちの方だ。白ドラゴンは本来、人間には懐かないし、まして女性は近づけないはずなんだが…」
サタンはまじまじと加奈を見つめました。
「な…なによ! 私が男だって言うの!」
「いや、そう言う意味じゃないんだ。白ドラゴンと会話出来るのは、唯一、サラだけなんだ」
「え? なんで?」
「サラは星虹銀河の母方の血を受け継ぎ、巫女的力を持っている。七色の弓矢もサラしか使えない。今は、この城から西へ離れた神殿の奥で祈りを捧げているらしい」
サタンから何度もサラという言葉が出るたびに、加奈は知り合い以上の関係のような気がしてきました。なぜかしら、加奈は言葉でうまく表せない寂しさを、感じずにはいられませんでした。その感情が一体何なのか、まだ、加奈にはわかりませんでしたが、同時にイライラしてきたのも事実でした。
「サタン、私、疲れているから、あっちへ行って!!」
何故かプイと怒ったように、加奈は自分の気持ちを打ち消すように、ベッドの中に潜ってしまいました。
ベッドの中に潜ってしまったので、サタンの様子はわかりませんでしたが、ふとんから顔を出した時は、サタンの姿は、ありませんでした。
何故か、またイライラして自分に対しても腹立たしくなってきて、枕をドアに向かって投げつける加奈でした。
「イテェ~~! 何すんだよ、加奈!」
ドアに向かって枕を投げつけたつもりが、ちょうど加奈の見舞いに来たレッドの顔にもろにぶつかってしまいました。
「あ、ご…ごめんなさい。ちょうど修学旅行を思い出して、枕投げをしていたものだから…ぼそぼそ…」
「え? 修学旅行?って何?? でも、枕を投げる位なら大丈夫だな。白ドラゴンの事だけど、サラに相談したら、一緒に行くって言うから、加奈は、城で待っててくれないか」
「え? どうして?」
「モンスターに多くのドラゴンが犠牲になってしまったから、島の方でドラゴン狩りに行くつもりなんだ。ある程度調教して乗れるようになったら、竜神山のドラゴンの元へ行こうと思うんだ。サラが行けば、加奈は行く必要ないから…」
またしても、ここでもサラのことが出てきました。自分と同じ15才の少女の存在が竜星にとって重要な人間であることが、ひしひしと伝わって来て、加奈はますます疎外感にさいなまれました。
急に黙ってしまった加奈に、レッドは、
「あっ、ごめん、話しすぎた。ゆっくり休んでよ。それじゃあ、僕は行くね。これ、お見舞いの花。気に入ってくれるといいけど…」
加奈の寂しさをレッドが知るよしもなく、机に大輪の真っ赤な薔薇の花のような花束を置くと、レッドは部屋から出ていきました。
「キュウウ~ン」
白ドラゴンだけが、加奈の寂しそうな顔がわかるのか、慰めるように加奈の頬をペロペロなめるのでした。
加奈の目からポロポロと涙が流れ落ちて行きました。涙をぬぐうことなく加奈はベッドの上で身動きもせず、泣き続けていました。
窓の外は夜というのに、夕暮れ時のように明るく、大きな月のような衛星が、加奈をそっと見守るように、美しい金色の光を発していました。















































































