2018年07月07日
第5章 最終章 別れ路 -モンスター襲来-③-
「ライ、どうしたの? ライらしくないよ」
「え? ああ、さっき…。すみません、つい、カッとなってしまって。でも、急に宇宙船から飛ばされたのに、何故サタン様は!! ぶつぶつ、ぶつぶつ!!」
「アハハハ!!」
加奈は、何故かいつも冷静なライが、愚痴を言う姿が可笑しくて、大笑いしてしまうのでした。
「?? 加奈様、どうかなされたのですか?」
「クスクス、ううん、なんでもないよ。それよりほら、村に着いたみたい」
二人が村に入ると、ちょうど村人たちは畑仕事を終えたばかりなのか、それぞれの畑で食事をとっていました。
「おや、あんたたち、この星の者ではないね」
気さくな白髪の優しそうなおじいさんが声をかけて来ました。
「あの、すみませんが、宿屋か食堂はありますか?」
「そんなものは無いよ。小さな村だからね。良かったらうちにおいで」
「え!? でも…」
「遠慮しなくていいよ。久しぶりのお客だ。ばあさんも喜ぶよ。家はすぐそこだ」
可愛い赤い屋根と小さな庭には、色とりどりの花が植えられていて、まるで童話から出てきたような、メルヘン的な家でした。
やさしそうな小太りのおばあさんが、笑顔で迎えてくれました。お腹が空いているだろうと食事の用意までしてくれて、加奈とライは暖かな気持ちになるのでした。ようやく目覚めた竜斗は不思議そうに回りを見ながらも、加奈のひざの上でおとなしくしているのでした。
「おや、このドラゴンの子供は、もしかして白ドラゴンかね?」
「はい、おじいさんは白ドラゴンをご存じなのですか?」
「話を聞いただけだけど、本当に白ドラゴンが存在するとはね。白いドラゴンはとても珍しいドラゴンだから、大事にしてあげなさい。わしは、まだ仕事があるから、あなたたちは好きなだけいてくれて構わないからね。それじゃあ、ばあさん、行ってくるよ」
「はいはい。気をつけて下さいね」
加奈はふと、机の上に飾られた、加奈と同じ位の少年の写真に目が行きました。写真の前には花と食べ物が置かれてありました。写真を見つめている加奈に、おばあさんは話し始めました。
「この子は私たちのたった一人の大事な孫だったのですよ。とってもやさしく気のきく子で…」
おばあさんは、話をしながら、涙を流すのでした。
「おばあさん…」
「あっ…ごめんなさいね。この村は、普段は穏やかな村なんですけど、時々、畑を荒らす大型のモンスターが出るのですよ。じい様の畑がモンスターに荒らされて、その畑を守ろうとして、大ケガをしてしまってね。隣り村に傷に良く効く薬があるのですけれど…。うちの村の隣り村は昔から仲が悪くて…」
おばあさんは、もうそれ以上は何も言わず、少年の写真を手に取り、優しく写真を何度も撫でていました。
いろいろ事情があるのだと、加奈とライはそれ以上、話を聞くのをやめました。どこの星でも、人と人との争いがあり、弱い力の無い者が犠牲になるのは世の常なのだろうかと、加奈は淋しく思うのでした。
「た、大変だ~!! ばあさま、大変だ!!」
ドアが思い切り開くと、真っ青になって息を切らした村人が、何人か入ってきました。
「あいつが…! 例のモンスターが現れた! じい様は!? じい様はどこだ!!」
「ええ!? 畑に行っているのだけれど…」
「まずい!! 早く知らせて逃げないと、今度のモンスターはでかいぞ!!」
「そ…そんな…」
おばあさんは、恐怖のために腰が抜けて動けなくなってしまいました。
「ライ! 私たちが行こう!」
「加奈様、危険です!!」
「とにかく、早くおじいさんの畑へ行って知らせないと。おばあさん、おじいさんの畑はどこですか?」
「ここから山に向かって道なりに行けば畑に着くけれど、あなた達まで危ない目に遭わせては…」
「急いで、ライ!!」
「はい!」
二人は、全速力でおじいさんの畑へと急ぎました。竜斗も大きく羽を広げて、加奈たちの後ろからついて行きました。
「グガアア~~~!!」
すごい声が聞こえて来ました。まるでマンモスのような巨大なモンスターが、ドシドシと村の方へ来るのが見えました。
「まずいわ、このままじゃあ村の人たちも危険よ!!」
「加奈様、おじいさんの畑が見えて来ました。あのままじゃ踏み潰されてしまう!!」
「ライ、私が弓で足止めさせているから、その間におじいさんを助けて!!」
加奈が星の弓を引くと、星の弓は光り輝き、強靭な矢が凄い速度でモンスターの右足を射抜きました。
「もう1本!!」
加奈はまた集中し、星の弓を引くと、星の弓は光り輝き、風の矢となり、モンスターの左足を射抜きました。
「グガアアア~~~!!」
モンスターは、凄く苦しそうな声を出し、その場で座り込んでしまいました。
「今よ、ライ!! 急いで!!」
「ハイ」
ライは、畑の真ん中に倒れているおじいさんを担ぎ出し、どうにか助け出すことに成功したのでした。気絶しているものの、どこもケガをしている様子はありませんでした。
しかし、モンスターをこのままの状態にしては、村の方に来ては村人たちが危険です。
その時、竜斗がモンスターの方へ飛んで行きました。
「竜斗!! 危ない! 戻ってらっしゃい!!」
竜斗は、モンスターの頭の回りをぐるぐると回り、モンスターは立ち上がり、竜斗が山の方へ向かうと、もと来た道を足を引きずりながら、去っていきました。
モンスターが去った後、竜斗も加奈のもとへ帰って来ました。
「竜斗、偉いわ、よくやったわね」
「ガウガウ」
竜斗はくるりと体を回転させました。
「加奈様、もう大丈夫です。おじいさんを早く家に連れて帰りましょう」
「それにしても、あんなに巨大なモンスター、また現れたらどうするのかしら…」
おばあさんが涙を流して喜び、おじいさんは、目を覚まして何事が起きたのかと、キョトンとしていました。
おばあさんはとても喜んで、夕食にはこの村名産の珍しい果物を切ってくれました。
山盛りの食事で、遅くまで語らいながら、おじいさんの無事を喜び合うのでした。